Ⅰ. 煩悩と愛の昇華
from 詩情と密教の手引き_嵯峨
#秀歌30 #ガイドライン
Ⅰ. 煩悩と愛の昇華
世俗の情念を、いかに仏の慈悲のエネルギーへと転化させるかという教えです。
歌番号
詩情(歌の情景)
密教の教えとの関連(法話の核心)
煩悩即菩提
滴塵007:半鐘を連打するなり君の瞳(め)に 射られし我れの心の臓かな
恋の衝撃が心臓を半鐘のように激しく打つ様子。
煩悩即菩提(ぼんのうそくぼだい): 煩悩は消すべきものではなく、「激しいエネルギー」そのもの。そのエネルギーを仏道へと転換せよという密教の教え。
四弘誓願
露滴014:幾たびも生まれ変わらんこの穢土に 衆生の尽きる そのあしたまで
永遠に生まれ変わり、全ての衆生が尽きるまで救済を誓う大いなる決意。
四弘誓願(しぐせいがん)と利他行(りたぎょう): 自己の悟りより他者の救済を優先する菩薩の究極の誓い。輪廻転生を衆生済度の場と捉える。
大悲の献身
露滴115:吾妹子が歯を立て囓るやもぎたての 赤茄子(トマト)に成りたい初夏の食卓
愛する人に全てを捧げ、食べられることで一体になりたいという強烈な願望。
大悲(だいひ)の献身:自己を消滅させてでも他者を満たそうとする情念は、同体大悲に通じる無私の愛の萌芽。
大慈悲心
露滴110:何故に頬を伝うる涙かな かよわきものをただ慈しむ
頬を伝う涙が、自己の悲しみではなく弱者への慈しみの情から来ていると気づく。
大慈悲心(だいじひしん): 愛別離苦といった個人的な情が、「かよわきもの」全体に向けられる普遍的な慈悲へと昇華した瞬間。仏とは大慈悲心。